
発電機や大型の電動機などには高電圧の電気絶縁材料が欠かせません。電気絶縁材料の研究開発は性能の向上やコスト低減をめざしておこなわれています。わたしが担当するのは水車発電機に使われる電機絶縁材料の開発・評価業務です。水車発電機の絶縁は高温・高電圧・振動といったきびしい環境にさらされます。悪環境に耐えて、製品の信頼性を保証する材料の開発が求められます。絶縁材料のほとんどは、いわゆるプラスチックと呼ばれる高分子材料です。高分子材料そのものに関する知識や、学生時代に学ぶ電気絶縁の現象に関わる知識、材料の機械的特性ついての知識などが仕事で活きてきます。

実務について驚いたのは、複数の研究テーマを同時に並行して進めなければいけないことですね。学生時代にはひとつかふたつくらいだと想像していました。時間の管理と工程の調整がシビアに求められる現場です。当然、異部署や社外の方とコミュニケーションをとる機会が多くなります。ビジネスマナーも必要になります。先方の都合を考慮した対応をしなければいけません。本業の技術力を磨くことも大切ですが、社会人としての教養を身につけることも大事です。

エンジニアには発想力が必要です。それと同じくらい判断力が求められます。開発の場面ではいろんなオーダーが出てきます。たとえば、高強度でかつ電気絶縁特性にすぐれ、さらに環境負荷低減効果があって、しかも低コストで…。すべてを満たす材料をつくるのは物理的に不可能です。大切なのは絶対にゆずれない性能をひとつ選択することです。これと決めたらあとはアイデアを出しまくる。なんとかほかの性能もまかなえるアイデアを探すのです。発想力の勝負です。いずれにしても困難な作業ですが、意外とヒントは同僚とのちょっとした立ち話のなかで発見したりするものです。周囲と議論する機会をもつことが大切です。地球温暖化を解決するような発明が、仲間との夢語りから生まれることがあるかもしれません。