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「人の暮らしを支える仕事がしたい」中園には常日頃からこの思いがあった。中園のエネルギー事業に対する強い思いは、漠然ではあるが、一本芯の通ったものとしてしだいに確立されていった。
今の時代、人の暮らしを支えるエネルギーの代表と言えば、原子力エネルギーを取り上げるのはごく自然なことである。原子力発電所において、放射線測定装置が必要不可欠なものであることは言うまでもない。原子力監視計装の中核とも言える核計装や、安全上重要な放射線計装システム。社会的にその有用性を認められている原子力発電だが、万一の事故のことを想像するとどうしても神経質な監視を余儀なくされる。
「監視システム全体として、当たり前ですが、高信頼性、短期定期点検への対応、そして経済性、保守性の向上が求められ、監視用モニタの役割も重要になってきます」と中園はモニタの重要性を強調する。中園の担当は、放射線を測定・監視する機器の電気設計。回路・基板設計から組み込み用ソフトウェアの開発、試験・保守ツール開発など、業務は広範囲にわたる。
「入社2年目の頃から、新機種の開発を任されました」と、淡々とした表情で答える彼の目には、エネルギー事業を通じて社会の役に立てる充実感が映っていた。一方、「入社して初めての製品開発であり、何から始めればよいか分からない状態からのスタートでした」と不安たっぷりだったことも覗かせていた。
機器の基本設計立案、測定・監視の核となる信号処理基板の開発、約2年の歳月をかけて製品となり、彼が手掛けた製品は、現在では4プラントの原子力発電所で24時間365日、放射線を監視し続けている。

設計は自分との闘いなのか。「自ら技術的課題を検証する時間が多く、いつも図面と向き合っています」中園はこう話す。しかし先輩や同僚も、皆同じ悩みを経験しているという。技術者とはそういうものなのか。これは避けて通れない道なのか。期待と苦悩、充実感と達成感が背中合わせの日々が続いた。
測定・監視モニタの設計も詳細設計段階に入ると、マンマシンインターフェイス部分のハード設計者、組み込みソフト設計者、機構設計者など、それぞれの分野のエキスパートが加わり、総勢7〜8名からなるチームでの協力体制へと変化する。個人ではどうしようもないことが、チームだから解決できることもあるのだ。野球だってそうじゃないか。1番から9番までの選手たちが機能して「打線」として攻撃になる。守備だって連係プレーやサインプレーもあり、個人の能力以上のものが発揮できるようになり、カタチがつくられていく。
「これが設計のチームワークか!」中園は、仕事を重ねるうちに、技術者同士の連携とも言うべき絶妙なフォーメーションを強く感じるようになった。

設計者として時間が経過するうちに、プロジェクトでは、ベテランの力が大いに発揮されることも理解できた。自分との闘いを続ける中園にとって、あるプロジェクトで当初から一人で設計立案を任され、半ば途方に暮れていたところ、途中からベテラン技術者の上司に参加してもらったことで、プロジェクトの進行がスムーズに運ぶようになった。アドバイスをしてくれる上司の言葉は、時には口うるさく感じるが、設計の基本を叩き込んでもらえているOJTだと思うと苦にならない。むしろ、中園の技術者としての下地はそのお陰でできたに違いない。
設計者としての中園に、仕事の醍醐味を聞いてみた。
「初めての感動ですか?それは、何たって自分で回路図を引いた基板の試作品を初めて手にした時ですよ!」逆境にもめげずにひたすら図面と向き合い、達成感を口にした彼の満足そうな口調が印象的だ。周囲のささえが何よりも力になったことを彼は肝に銘じている。

中園は、実はこんな失敗も経験している。製品を出荷した後、定期点検のための一部の機能が現地の作業条件に適さないことが発覚し、工場への引き取り、そして改造作業が発生してしまった。そのため、現地の作業員、工場の試験担当、生産担当などに多大な迷惑をかけることになった。現場をもっと知るべきだった。何よりも、現地作業員に対する配慮不足が原因の失敗に、設計者としての責任の重さを痛感する。
しかし、このような時も決して仕事は独りではないことを実感した。「起ってしまった失敗をいつまでも引きずっているより、同じ失敗を繰り返さないように次のことを考える方が重要だ」現場の担当に厳しくも心温まる言葉をかけられた時は、独りで向かっている図面の向こうには、仲間の支えがあるということを改めて感じた。
信頼性が命となる原子力。製品開発設計をする中で、プロジェクト全体と製品の役割を常に意識し、中園は今日も図面と向き合っている。
*記事は2008年11月作成時のものです。