グローバル・プロジェクトの実務ノウハウ
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日本の常識は通用しない・・・グローバル・プロジェクトの特徴
海外を目指すITエンジニアのための「グローバル・プロジェクト」の実務ノウハウ[第1回]
2018.6.1
日本と海外での共同生産やサプライチェーンレベルでの連携ビジネスが当たり前の今、ITエンジニアにもグローバル化が必須要件として求められています。本連載では、ITエンジニアが海外進出をするにあたって知っておきたい海外での習慣・法律の違いや、プロジェクト管理のポイントについて解説していきます。
グローバルPMOになるためには…
グローバルPMO(Project Management Office)とは、企業内で同時並行に進行している全てのプロジェクトの推進を支援する組織と一般的には定義されています。この組織で活動するためには、海外で働くためのノウハウを知っておく必要があります。
そこで本連載では、具体的なエピソードに基づいて、そのノウハウを包み隠さず公開したいと思います。「グローバル」と聞くとハードルが高いと感じる人も多いようですが、これらを知っておけば恐れる必要はありません。
特に本連載は、主に海外ならではの文化・習慣などについて、実務で役立つノウハウを網羅しました。
日本の常識が通用しないことを示してから、システム導入そのものの留意点、海外で働くうえで知っておきたい慣習や法律、そしてグローバル・プロジェクトの管理ポイントを紹介していきます。
最初に、必ずしも平均的ではありませんが、典型的と思われるグローバル・プロジェクトをご紹介することで、グローバル・プロジェクトのおおまかなイメージを持ってもらいましょう。
IT関連会社のA社の、需給管理、調達、製造、受注、出荷、売上、会計処理といった一連の業務で一斉にERPパッケージを導入するという日系企業では数少ないグローバル一気通貫型プロジェクトのマネジメント支援を行ったときの事例です。
導入拠点は、日本、アメリカ、ドイツ、オーストリア、中国、シンガポール、イギリスです。導入を担当したベンダーは、国内のERP導入専門ベンダー(業務設計とパッケージ導入を担当)とインド企業(設定とアドオン開発を担当)です。
このようなプロジェクトでは、導入拠点である国が多数あり、ベンダーも日本とインドが一社ずつなので、さまざまな国の事情を考慮してプロジェクトの推進を支援する必要があります。
どの国でも税関連(特に関税や付加価値税)の対応は大変で、要件ヒアリング、設定、確認は時間がかかります。特にドイツの税申告と監査は面倒で、パッケージにも手を入れると同時に、帳票系の開発についてはかなり工数がかかりました。
またグローバルビジネスでは、国や地域をまたがる拠点間取引を行っていますので、各国や地域の着荷や検収基準の違いをしっかりとERPに落とし込まなければいけません。これもテストを含めた確認に工数が取られることになります。
QCDを優先するのは日本人だけ
こうしたシステム開発論的な大変さももちろんあるのですが、それ以上に大変だったのが、各国や地域の現地常駐メンバーのスケジュール管理でした。彼らは遠隔地から毎週出張ベースで現場に集まってきているのです。
土曜日は掃除と洗濯で忙しく、日曜日は休日です。したがって移動日になる金曜日に打ち合わせを入れることも御法度なのです。何かの拍子で打ち合わせが長引いたら、家に帰れませんから。
そのため、スケジュールは月曜日から木曜日で引く必要があります。それだけではなく、バカンス休暇やクリスマス休暇の準備期間も基本的に仕事をしないと思うのが無難です。QCD(品質・コスト・納期)よりもバカンスが優先されます。
土日をつぶして移動してまで、QCDを優先するのは日本人だけです。
ただ、イギリス人やアメリカ人、中国人、インド人に比べると、ドイツ人やオランダ人はやや日本人寄り(つまり「働き者」)です。とはいえ、ムダな会議などを嫌うのはどの国や地域の人も一緒です。
もちろん個人差もありますが、国民性で捉えておくほうがいいでしょう。
とにかく「日本の常識」は世界では通用しません。これをまず押さえてください。そして、そこに大変さも楽しさもあります。