やっぱり出社しないと仕事にならない?!それ「業務改革」のスタート地点です!
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テレワークから始める間接業務効率化
2020.10.26
イー・ビー・ソリューションズ株式会社 コンサルティング部
業務コンサルタント担当、マーケティング担当
コロナの感染拡大はまだまだ予断を許さない状況ですが、会社の経営者やマネージャのみなさんは、一度はテレワークにトライして、社内のオフィスワーク(間接業務)には大量のペーパーワークやハンコ業務が残っているとわかり、テレワークが中々進まないと行き詰っていないでしょうか?
またそれだけでなく、例えばペーパーワークをひも解いて、ワークフローシステム(*1)に置き換えようとすると、先送りしてきた根本的な業務課題が露呈し、大小の改革に本格的に取り組まざるをえないこともあるかと思います。
(*1)ワークフローシステム:電子化された申請書や通知書をあらかじめ決められた作業手順にしたがい、集配信・決裁処理を行うシステム
従来の業務改革は、下図でいう「b) 直接業務」に対して行われることが多く、一方、比較的制約が多く聖域化されている仕事が多かった、経理・総務・企画・営業(支援)・調達などの「c) 間接業務(オフィスワーク)」は、今こそ改革(聖域打破)のチャンスです。
今回のコラムでは、間接業務で出社しなければできない業務(図のd)について、テレワークにできないか考えることで、「業務のムダの見える化」ができ、さらには周辺業務の課題解決に結びつけていく、というアプローチをご紹介します。
目次
1.まずテレワークを追求してみる
Ⅰ.そもそもなぜ出社するのか? ~意識改革~
業務コンサルティングの手始めとして、コロナ禍の中で間接業務のためにオフィスに出社している人たちに、出社した理由をヒアリングしてみると、大きく2つ「物理的要因」と、「心理的要因」に分類できました。
物理的要因 | 心理的要因 |
---|---|
|
|
「物理的要因」は、テレワーク開始当初から課題として取り上げられており、一つ一つ物理的なモノやその制約を、電子化・オンライン化・会社ルール見直しなどで解消していくことが、解決の方向性です。
一方「心理的要因」は、テレワークが進むにつれて明らかになってきた課題で、対面が前提とされてきたビジネス現場において、あたりまえに得られていた非言語コミュニケーションが、テレワーク・オンライン化することで遮断されてしまい、なんとなくできていた「距離感をはかる」、「顔いろ・身振りで気づく」、「横にいて励ます」、といったことが行えなくなったことで、普段どおりの業務遂行に支障が生じている課題です。
これについては、「Teams(*2)やSlack(*3)などのコミュニケーションツールでの雑談チャットルームの常設オープン」、「オンライン飲み会・ランチ」、「オンライン会議での同一背景参加(*4)」などで、技術で一部分カバーすることも可能かもしれません。
(*2)Teams: Microsoft社のビデオ会議・チャット・資料共有を行えるシステム
(*3)Slack: Slack社のチャット・メッセージング・音声通話を行えるシステム
(*4)Microsoft Teams 新機能 Together Mode (2020/7/8発表)
しかし、「物理的要因」・「心理的要因」を軽減し、現状をオンライン化するのだけでは限界があり、それを克服するには、オフィスで働く人たちの「意識改革」がとても重要となります。
- 「物理的要因」・・・現状のおきかえではなく、無駄なものを廃止・修正し、オンライン化へシフト
- 「心理的要因」・・・あいまいな役割・仕事分担から、自立したアウトプット型思考へシフト
「物理的要因」の意識改革では、たとえば郵便物をオフィスに確認しにいっているのであれば、そもそもなぜこれは郵便で来ているのか、法的にはPDFファイルなどでもよいのではないか、といった根本的な立ち返りを常に意識し、それを繰り返すことが求められます。
「心理的要因」の意識改革での、自立したアウトプット型思考とは、自分のポジションに照らしてアウトプット(結果)すべきことを決めていくことで、一人ひとり自立していることが求められます。
たとえば、新人であっても「e-Learning教育」を受けていて、完了期日に遅れそうであれば、それを上司にみずから伝えなければなりません。また、体調やメンタルもある程度自ら管理し、相談ごとなどあればすぐに上司や同僚にアウトプットするようにしないといけません。
テレワーク下では、黙って閉じこもっていては、誰にも気づかれません。
「心理的要因」については、自立しアウトプットして完結すれば、遮断された非言語コミュニケーションがすべて解決するわけではないですが、テレワーク時代には必要な考え方と言えます。また、この考え方は社員を専門人材としてあつかい、そのジョブに対してのアウトプットで評価される、ジョブ型雇用(*5)にもつながっていきます。
(*5)ジョブ型雇用: 職務や勤務形態を限定し、定めた範囲の中で人材を評価する制度
テレワークを進めるには、コロナ禍の中で出社せざるをえなかった仕事と、その「物理的要因」・「心理的要因」を、社内アンケートやヒアリングで聞きだすことからスタートしましょう!
この「意識改革」は、テレワークを進めるだけでなく、新しい働き方改革への第一歩になります。
Ⅱ.テレワークではできない仕事とは? ~制約条件~
つぎに、オフィスワーク(間接業務)のうち、テレワークが困難な仕事とは何でしょうか?それは極論でいうと、監督省庁や社内規程で実エビデンスの保存、書類の印刷・押印・提出が必要な仕事になります。
また顧客や取引先で電子化が認められないと、こちらも紙と押印が必要になります。
社内的にはワークフローや電子契約が進んでも、国と社会のルールが変わらないと、オフィスワークの完全なテレワーク化はまだ困難と言えます。また電子帳簿保存法も2020年に改正されていますが、それを社内のルールに落とし込まないと、実際には活用できません。
テレワークが困難な仕事 | テレワーク(オンライン)化できる仕事 | テレワークしやすさ | |
---|---|---|---|
経理 |
経理エビデンス(印刷・押印・保存) 税務申告書類(印刷・押印・提出) 銀行振込・送金業務 |
決算処理、経理伝票受付・登録、管理会計に関する社内承認フロー | 〇 |
総務・人事 | 労務・税務・年金関連書類(作成・提出) | △ | |
営業 | 顧客への見積回答・契約書・納品書(印刷・押印・提出:顧客による) | 受注決裁フロー、経費申請・承認 | 〇 |
調達 | 調達先への発注書・作業完了報告書(印刷・押印・受領:調達先による) | 購買請求受付、請求書回付 | ◎ |
企画 | 株主総会議事録・株主名簿・取締役会資料・契約書関連(印刷・押印) | 社内決裁依頼フロー、各種社内申請・アンケート | ◎ |
上表を見てわかるように、領域別には調達・企画は社内での申請・回付が多く、ワークフローに置き換えることで、テレワークが比較的容易です。
一方、総務・人事や営業は、行政当局へ提出物や、客先次第で印刷・押印が残る契約書類等が多く、テレワークが難しいと言えます。
テレワークが可能な仕事をヒアリングする際には、こうした法的・客先に依存した制約でないか、確認して、それ以外であればテレワークでできる、と立ち返って考えることが重要です。
Ⅲ.しだいに出社がふえてくるのはなぜか? ~会社の制度・雰囲気~
一度はテレワークを徹底したものの、しだいに出社する人が増え、気づくと多くの人がオフィスにいることはないでしょうか?ご存じかも知れませんが、テレワークには2通りのスタイルがあります。
- (強制的なテレワーク) 緊急事態宣言などで、会社側から社員の出社を制限する
- (選択的なテレワーク) 自宅での作業環境が整い、出社時と変わらないアウトプットを残せる社員が、会社にテレワークを申請し、会社が許可する
「強制的なテレワーク」についてはまさに2020年春に日本や世界で外出自粛に合わせて行われていたもので、まず会社が在宅での作業を社員に指示するため、否応なくテレワークは進み、どうしても在宅ではできない作業をするときだけ、出社します。
一方、テレワーク自体はコロナ禍が収束してなくなっていくものでなく、その後も多くの会社が「選択的なテレワーク」へ移行していくと言われています。この場合には、社員が積極的にテレワークを選べるような制度や環境をそろえなくては、テレワークは拡大しないと言えます。
分類 | 施策 | 具体例 |
---|---|---|
会社制度づくり | 業務規程 | ペーパー・ハンコ業務の規程見直し、リモートオフィス・在宅規程対応 |
人事・評価制度 | ジョブ型雇用の検討 | |
在宅支援 | 通信ネットワーク、光熱費、イス・机・ディスプレイ、引っ越し等 | |
業務シェア・負荷平準 | 経理入力作業の分散・月中登録 | |
仕組みづくり | システム化 | 情報漏洩対策、ワークフローシステム、経費精算等のクラウドシステム、 システム自動連携・統合 |
情報共有 | グループウエア、チャット、Web会議システム | |
働きすぎ抑制 | テレワーク向け勤怠管理システム、PC on/off管理 | |
雑談コミュニケーション | チャット、オンライン飲み会・ランチ | |
サンクスポイント | ||
雰囲気づくり | トップ情報発信 | Webinar、 動画・ブログ配信 |
One on Oneの実施 | ||
全社イベント | Webinar、著名人社内セミナー |
こうした施策は、「トップ・経営陣の意思決定」と、「現場で問題となっていることの課題改善」の、2つの観点から、「ニーズの発見→企画→試行」を繰り返し、有効な施策として定着させていきます。
たとえば、在宅支援で何が求められているかは、現場の人から要望から集めるのが最も的確で、意外に「作業用イス」や「マルチ表示用PCディスプレイ」が必要という声があがっていました。
一方、全社オンラインイベントなどについては、社員へのメッセージ発信のために、経営陣が立案・企画しなければなりません。
Ⅳ.テレワークをすすめるステップとは?~単なるテレワークからの脱却~
それでは、会社でオフィス業務のテレワークを進めるには、どのようなステップを踏めばよいのでしょう?それも単に現状の業務をテレワークにするのではなく、改善をしながらテレワークにシフトするには、どうすればよいでしょう?
まず、オフィスワークを行っている人たちに、新しい働き方(テレワーク)へ進むことを受け入れてもらい、現状のままの業務をオンライン化しても、ムダや非効率になってしまうかもしれないという、「①意識改革」からスタートします。
オフィスワークをする人が、現状の業務を遂行することにとらわれまま、オンライン化を推進していると、例えば紙とハンコでの申請書を、そのまま全く同じフォーマットでワークフローの申請書と印影に置き換えてしまい、効率化とは程遠い結果にもなりかねません。
必要なのは、申請する内容であり、申請者・承認者・日時が、なりすまし・改ざんできない仕組みであれば、よいはずです。こうした、原則に立ち返ってもらうためにも、「①意識改革」からスタートします。
次に、「②現状ヒアリング」で、現在の業務を行っているオフィスの人にヒアリングを行い、現状行っている作業や、押印している帳票を、エクセルなどに書き出してみます(見える化)。
このとき口頭ですませず、リスト化をすると、小さな会社でも数百もの押印が必要な帳票があり、「社長印」「職印」「日付印」「署名」など、思った以上に多くのハンコが使われていることが明らかになりします。こうした現状を把握するためにも、「②現状ヒアリング」は必須の作業になります。
そして、あるべき姿に近づけるための「③改善策を検討」します。
改善策を検討するときには、そもそもその作業や押印は必要なのか、また会社で過去定められたルールは、どういった背景があったか、など深堀りが必要で、現在の担当者には、ECRSの原則などで疑問を丹念に投げかけることが必要です。(詳しくは→リンク)
- Eliminate(排除)~ "これを機に"止められないか?
- Combine(結合と分離)~ 多少非効率になっても3密回避視点で業務を統合&分散できないか?
- Rearrangement(入替・代替)~ 実施タイミングの変更や別の方法でリスク回避できないか?
- Simplify(簡素化)~フェイス・トゥ・フェイスから遠隔化、デジタル化できないか?
そして、「4.改善策を実施」し、最後に「5.効果検証」をし、有効であるものを仕組化・ルール化していきます。
- 意識改革 ~ 今のままオンライン化では、ダメであるという意識付け
- 現状ヒアリング ~ 今の状態を把握し、ムダを見える化する
- 改善策検討&評価 ~ 今の状態は適切か見直して、必要な施策を決定する
- 改善実施 ~ テレワークの施策をはじめてみる
- 効果検証 ~ 効果があるか評価し、つづけるものを仕組化・ルール化する
2.テレワーク推進から、業務改善へステップアップ
テレワークを拡大していくと、様々な困難に向き合います。物理的・心理的な制約、業務上の制度・制約、会社制度については、すでに記述しましたが、それだけでなく、会社が潜在的に持っている業務課題があらわになることがあります。
(再掲)
冒頭でも示したように、例えば現状のペーパーワークをそのままワークフローシステム化しようとすると、それまで明らかでなかった過剰な承認プロセスや、コンプライアンス・リスクが見つかることがあります。適切ではない状態で、システムに載せることは非効率ですし、それが監査の対象にもなりえます。
またそれまで、出社して集中して作業していたことも、月中で分散して登録していくことで、テレワークで済むかもしれません。
テレワークの追求ポイント | 見えてくる潜在課題・ムダ(例) | 取り組むべき業務改革(例) |
---|---|---|
ワークフロー・オンライン化の検討 |
承認作業の停滞、リードタイム長さ 法務・税務上必要のない押印作業 物理エビデンス管理の不十分さ |
ペーパー運用からオンライン承認への移行 社内規程、承認ルート・階層の変更 物理エビデンスの管理規程見直し |
決算処理のテレワーク化 |
月末、年度末業務集中 経理処理業務の属人性 |
決算処理短縮のための自動化、データ整流化、作業分担・時期分散見直し 基幹・業務システムの見直し |
柔軟な会社制度 | 在宅勤務、サテライトワーク、ワーケーションなどの新しい働き方ニーズへの対応不足 | Job型勤務の検討、社会環境に合わせた会社制度の柔軟な変更 |
対面以外での情報共有 |
会社全体での意識共有手段の不足 社内ナッレジ共有の仕組み不足 チーム内コミュニケーション不足 孤立しやすい人へのサポート |
社内一斉イベントの見直し、情報発信手段(社長メッセージ,ブログ等)の見直し 社内ナレッジ共有ツールの見直し チーム内定例会、勤務時間外交流見直し |
テレワーク余地の可能性を追求することで、「業務のムダの見える化」がスタートでき、次第に周辺業務の課題解決に結びついていきます。
また長らく、先送りされてきた聖域課題も、大きなテレワークの機運によって、改革に向かうきっかけを得られると思います。
3.さいごに
いかがでしたでしょうか?
今回のコラムでは、ホワイトカラーの業務改善コンサルタントの視点で、テレワーク推進の課題と対策、本格的な改革へのステップを解説してきました。
コロナ禍でのテレワーク推進というテーマで、皆さんひとまず出社率の低減をめざしていると思います。ただ視点をかえると、テレワークを皮切りに、変えられなかったことを変える、変革のチャンスでもあります。
テレワークを推進している、企画部・管理部門の方々は、これを機に業務改善に着手するのはいかがでしょうか?
長いコラムに、最後までお付き合い有難うございました。
弊社では、クライアント企業のオフィス業務のテレワークの余地を診断し、その中で発見された業務改善・効率化課題を、ともに考え、解決策を提案していく、コンサルティングサービスをしております。
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