ITシステムトレンドの変化とEBSSの歩み
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『S-PMO』の時代[第1回] - ITシステムトレンドの変化とEBSSの歩み
EBSSマーケティングチーム
2019.1.13
日本の製造業を中心に最近のビジネスとITの話題
デジタルビジネス、モノからコトへ
ここ10年ほど製造業を中心とした業界のキーワードは、”デジタルビジネス”、”モノからコトへ”です。デジタルビジネスは文字通り、デジタル情報を活用して事業を展開することです。膨大なデータを収集して、データの関係性から売れ筋商品を予測したり、品質の向上をはかる仕組みが導入されており、この2年近くに急速に実用化が進んできました。
また、モノからコトへもデジタルビジネスと並行するように急速に進んでいます。これは顧客のニーズがモノを所有することからモノを利用するように購買意欲が変化し、モノを供給する側も競争の激しい製品売りから、製品を利用してもらうサービスで継続的に利益を上げるほうが利益力が高まることに気が付いたからです。
企業統合、貿易戦争、人材不足などが顕著に
もう少し広く世の中を見ると、日本の企業は荒波の中を突き進んでいます。
モノづくりで世界を席巻してきた製造業は、コストに勝る国々との競争に勝てずに海外企業に統合され、まだまだ競争力の高い自動車や自動車部品も大国の貿易政策により、販売戦略だけでなく生産立地の変更も余儀なくされています。さらには、先進国の中でも類を見ない急速な超高齢社会による人材不足が顕著になっています。
グローバルな視点とスピード対応が求められる
もちろん、日本の製造業も海外市場への進出、積極的な研究投資や技術者の育成、競争力の高い製品の創出に励んできました。しかし、グローバルな視点で見ると、長年かけて育ててきた技術が、技術のコモディティ化と共に短期間に多くの国々に伝わり、同じような製品が生み出されるようになり、そのスピードがものすごく速くなってきています。
電気自動車では、日産自動車が1997年にリチウムイオン電池(円筒型)を搭載した世界初の電気自動車(EV)を発売。「最高速120km/h、一充電当たり航続距離200km以上という性能面でも十分なもので、ミニバンをベースにしているだけに、大人4人がゆったり座れる室内も特徴。(日産自動車のホームページより)」。しかし残念ながら長く普及しませんでした。
いまや電気自動車の大きな市場は中国で、2017年に40万台のEVが販売され、その中でシェアを伸ばしているのが、中国の電池メーカー「BYD」です。
「BYD」は、2003年に自動車事業に参入。もともとパソコンの「電池メーカー」として培った技術力をいかし、積極的に電気自動車を市場に投入してきました。2018年上半期、中国のニュー・エナジー・ビークル(乗用車)市場において、およそ20.3%でシェア1位を獲得しています。(RESPONSE 2018/8/31より)
IT分野では、Cloudの利用で所有から利用へ
IT(情報通信)分野では、Cloud(ソフトウェアやハードウェアの利用権などをネットワーク越しにサービスとして利用者に提供する方式)、タブレット、携帯端末が普及し、企業ユース、個人ユースともに所有から利用に変化してきました。
もともとITは企業ユースが大きかったのですが、ラップトップPC、タブレットの普及により個人ユースが急速に拡大して、アプリケーションを無償や月額課金で利用することが一般的になりました。ここで大規模で堅牢性の高いCloud技術が培われたわけです。
もともとITの世界は、インターネットを利用した情報システムに強味がありますが、ビジネスモデルが変化する企業ユースにもインターネットを活用したCloudサービスが普及し、さらには基幹システム(販売、調達、会計、生産などの企業内システム)もCloud上に搭載されてSaaS( Software as a Service:ソフトウェアを通信ネットワークなどを通じて提供し、利用者が必要なときに呼び出して使う利用形態のこと)として提供されるようになりなりました。
当社(EBSS)のITコンサルティングへの取り組み
大規模な基幹システムの導入コンサルティングを経験
EBSSは、2001年の設立から東芝グループの国内外の拠点の基幹システムとして、オラクル社のERPパッケージ(Enterprise Resource Planning:企業の持つ様々な資源「人材、資金、設備、資材、情報など」を統合的に管理・分配し、業務の効率化や経営の全体最適を目指す統合型業務ソフトウェアパッケージ)である「OracleEBS」の導入をしてきました。
そして、そのノウハウをもとに東芝グループ外の企業の基幹システムの導入を実施し、その数は約50社、130拠点にのぼります。
基幹システムは同じ東芝グループでも事業体毎に要件に違いがあり、それに伴い求められる機能も異なるため、予め準備したチェックリスト方式の導入テンプレートを活用したり、チェックリストから自動でシステムパラメータを設定するなどシステム導入に工夫を加えてきました。
また、時代の変化に合わせて「OracleEBS」以外のソリューションで基幹システムを導入するケースもあり、システム導入プロジェクトの一員としてさまざまなソリューションでの導入経験も積んできています。
製造業の業務知識、グローバル経験を基に、企業のIT部門でIT企画業務コンサルティングを支援
システム導入プロジェクトだけでなく、製造業の業務知識やグローバル経験を基にして、顧客のIT部門で企画業務を支援する役割も増えてきました。
企画業務は、顧客のIT事業化に対する実行計画立案を策定するもので、業界動向やIT動向の調査、IT導入に関する要求仕様作成、ITベンダ選定支援など多岐にわたるものです。また、近年は業務改革や現場改善などの業務コンサルティング領域も積極的に支援しています。
システム導入を円滑に進めるPMO(プロジェクト管理オフィス)コンサルティング業務が増加
2001年の設立から17年間で、”ITを導入する顧客の立場”、”ITを構築するベンダの立場”の両方の経験をしてきたことによるプロジェクトを複眼でコントロールできる視点を評価いただき、プロジェクト管理オフィス(PMO)のコンサルティングが増えてきました。具体的には、顧客のIT部門の支援として、IT部門とITベンダの間に立ちシステム導入を円滑に進める役割です。
プロジェクトは対象とする顧客の業種や業務も多岐にわたり、当社が参画するタイミングもプロジェクトプランニング/開始時点のものもあれば、大きな問題点が発生して立て直すタイミングで参画するものもあります。
いずれも、正しく状況を把握して、さまざまな関係者とアクションアイテム、大日程を決め、役割分担して進めていくことが基本ですが、プロジェクトの難易度が高くなっている現在では、効率的にゴールに到達するために、発注者/受注者、業務ユーザ/ITそれぞれの立場を超えた「架け橋役」がますます重要になっています。
最近のITシステム導入のトレンド
ビジネス環境の急激な変化から、機能よりもスピードを優先してITシステムを導入する傾向へ
前述のごとく近年のビジネス環境は急激な変化をみせています。
ビジネスのスピードが加速し変化も激しいとなると、企業はビジネスチャンスに対して、追従し続けるために投資、マンパワーを増強するかの判断、また逆に早く見極めをつける判断がそれぞれ必要となってきます。しかしながら投資は無尽蔵には出来ず、またマンパワーの増強も働き手の減少している日本では難しい状況です。
そこで重要になってくるのが機械化とITの活用ですが、ITのベースは計算機なので決まったことしかできません。そのため、ITに何をやらせるかの要件を定義することが重要となります。特に基幹システムでは要件定義とシステム開発・テストに膨大な時間と費用をかけてきました。もちろん、今後もミッションクリティカルなシステム、差別化戦略をするためのシステムでは、従来通りの取り組みも必要です。
しかし、現代社会はスピードが重要で、ビジネスのスピードに対応してITシステムを導入し活用することが重要です。つまり、ITシステムには機能を求めるのでなく、ビジネスに必要なスピードを求めるべきなのです。
そのためには要件定義、システム開発・テストのリードタイム短縮が必要で、特に時間とお金のかかる固有要求のアドオン開発の削減のためには、上流の要件定義で固有要求を極力減らすことが必要です。
基幹システムにおいても、早く導入してすぐに止めることもできるCloud、SaaSに注目
ITの世界も急激に変化しています。
前述のごとくCloudは急速に普及してきましたが、業務アプリケーション層をCloud化したSaaS型の基幹システムも急速に選択されつつあります。汎用ERPベンダーのオラクルは「ERP/EPM Cloud」、SAPは「SAP S/4HANA」のクラウド版をリリースしています。いずれもグローバル事例から基幹システムに必要な機能を選別して実装したサービスです。
これらを導入した顧客の声を聞くと、従来からのITコスト見直しという目的に加えて、ビジネスの変化(海外拠点の再編、M&A、新市場参入)が導入の理由となっています。その理由はビジネスの開始時期が決まっていることで、開始前(もしくは、M&A時であればアプリケーションベンダから与えられた旧システム利用猶予期間中)に必要なITシステムを用意する必要があるからです。
そのためには、基幹システムといえども必要な機能を作り込むのでなく、用意されている機能を上手に使うことが優先されます。さらに、利用する場所も国内だけでなく海外のケースも増えており、インターネットで利用できるSaaSの活用は価値があります。また、自前のインフラも不要で運用を含めたサービス全体を利用できるので、ビジネスの変化や終息にともなうITシステムの変更・終了も、SaaSサービスならではの高い柔軟性です。